
キュービクルは時間の経過で劣化するため、適切なタイミングで更新・改修を行う必要があります。しかし人によっては更新の必要性がわからないという人もいるでしょう。本記事では、キュービクルの更新と改修について詳しく紹介していきます。必要性から時期やタイミング、流れについても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
キュービクル更新・改修の必要性
一見ただの大きな箱のように見えるキュービクルの中には、変圧器や電流・電圧計、負荷開閉器などの様々な装置が詰まっており、発電所から送られてくる高電圧の電気を受け入れ、変圧して配電しています。キュービクルは頑丈な造りになっていますが、一般的な建造物と同様に雨や風、紫外線などの影響を受け、長年使用し続けることで必ず劣化します。そのため、設置からある程度の時間が経過したら更新を行わなければいけません。ここでは、なぜ更新・改修が必要なのかについて詳しく紹介していきます。
事故を起こす危険性がある
キュービクルは、高圧の電気を安全に受け取り、使いやすい電圧に変えて建物に供給するための設備です。長期間使用することで必ず経年劣化が進み、劣化した状態のまま使用を続けると漏電事故や感電事故、火災・爆発事故などの取り返しのつかない事態を引き起こす恐れがあります。事故の発生を未然に防ぐためには、定期的な点検を実施するだけでなく、適切なタイミングでの更新が必要不可欠です。事故が発生してから対応するよりも、事前に工事を行った方が結果的にコストを抑えられるでしょう。
電力ロスが発生する
キュービクルには、高圧進相コンデンサが組み込まれており、電力のロスを抑え、電力利用効率を高める機能があります。通常であれば、この機能によって無効電力が抑制され、無駄な電力消費を防ぐことが可能です。しかし、長期間使用されたキュービクルでは、内部の機器や部品が劣化し、電力効率が低下します。また、変圧を行う際には、構造上どうしても電力損失が発生しますが、新しい設備ほど変圧時の電力損失を抑えることが可能です。劣化した状態で使い続けると、見かけの消費電力が増えていても、実際に有効に使われている電力の割合が低下し、結果として電気料金が割高になる可能性があります。
更新工事には短期的なコストがかかりますが、長期的には電力効率の改善によって電気代の削減につながり、経済的なメリットが得られるでしょう。
故障による停電リスクがある
キュービクルは、高圧の電気を受け取り、建物内で使用できる電圧に変換・供給するための設備ですが、長期間使用すると内部の機器が劣化し、故障のリスクが高まります。キュービクルが故障すると、建物への電力供給が止まり突発的な停電によって、業務の中断や生産ラインの停止など、施設運営に大きな影響を及ぼす可能性があります。故障による停電のリスクを未然に防ぐためには、適切なタイミングでの更新・改修が不可欠だと言えるでしょう。
保守のコストが上がる
更新・改修が必要な理由としては、劣化したキュービクルを使用し続けると保守のコストが増加することも挙げられます。キュービクルは、一度設置をすれば長期間に渡って使用し続けられる設備ですが、経年劣化が進行すると保守や点検にかかるコストが徐々に増加します。保守のコストを増加させないためには、適切なタイミングで設備を一新することが大切です。
キュービクル更新・改修の時期やタイミング
次にキュービクルを更新・改修すべき時期とタイミングについて紹介します。これまでに更新・改修を実施したことがなく、適切なタイミングがわからないという方は、ぜひ参考にしてください。適切なタイミングで更新・改修を行うことで、重大な事故の発生を予防できます。更新・改修時期の目安
一般的に更新・改修の目安は、設置工事後15~20年前後だと言われています。設置工事後15年~20年前後で更新・改修を実施すべきだとされている根拠は、各製造メーカーが15年~20年での更新・改修を推奨しているからです。もちろん、必ず15~20年で設備を一新しなければいけないわけではなく、建物のオーナーによっては20年以上同じキュービクルを使い続けるケースもあります。15~20年は目安の1つとして考え、実際の経年劣化の状況や法定耐用年数、実用耐用年数などを踏まえて検討すると良いでしょう。
耐用年数
キュービクルの耐用年数は、法定耐用年数と実用耐用年数の2種類存在します。法定耐用年数では15年、実用耐用年数では20年とされています。法定耐用年数とは、国が法律で定めたキュービクルを新品の状態から継続して使用し続けられる年数のことです。会計処理における減価償却費を計算するために法律で定められた耐用年数であり、15年が経過しても使用を続けられる状態なのであればこれまで通り使用できますが、資産価値はゼロになります。実用耐用年数とは、製造メーカーが定めているキュービクルを安全に使用できる期間のことです。
キュービクル更新・改修の流れや期間
キュービクルの更新・改修は、大まかに現状確認、更新・改修工事の計画、電力会社への申請、工事日の調整、設置、試運転の流れで進行していきます。ここでは、キュービクルの更新・改修の流れと期間について詳しく紹介していきます。現状確認
キュービクルの更新・改修工事を行う際は、最初に現状確認を実施します。現状確認では、キュービクル本体の劣化状況や内部機器の状態を確認するとともに、作業スペースの確保が可能か、クレーン車両の駐車スペースはあるかなどもチェックします。とくにクレーン車両の駐車スペースの有無は、施工計画に大きく影響する重要な確認項目です。現状確認で得られた情報を基に、最適な更新・改修方法や工事の計画を練ります。
工事の計画
現状確認が終了したら、確認で得られた情報と建物のオーナーの要望を基に、キュービクルの更新・改修工事を円滑に進めるための計画を練ります。この段階では、既設のキュービクルの点検記録や仕様書、設備に関する書類などを提出するよう求められる場合があります。関連書類は事前に準備しておくと良いでしょう。
電力会社への申請
キュービクルの更新・改修は、電気工事に該当するため、必ず工事を実施する前に管轄の電力会社へ申請を行う必要があります。申請を行うと電力会社から審査が実施され、承認を得られ次第、次の工程に進みます。なお、電力会社への申請作業は建物のオーナーではなく、工事を担当する電気工事会社が代行するケースが一般的です。電力会社への申請方法がわからなくても心配ありません。
工事日の調整
電力会社への申請が無事に完了したら、設置工事を実施するための日程調整を行います。日程の調整では、施設の稼働状況や停電の影響を考慮して工事の実施日を決定します。キュービクルの施工時には、建物全体が停電することから夜間や休日に工事を実施するケースも珍しくありません。なお、工事中は必ず停電し、停電を避けて工事を完了させることはできません。
設置
設置工事の当日は、まずこれまで使用していたキュービクルを撤去し、その後新たな設備の設置が行われます。キュービクルは人力で運べないほどの重量があるため、搬入・搬出にはクレーン車を使用することが一般的です。設置場所の安全確保や周辺環境への配慮も含め、慎重に作業が進められます。工事の規模や設置条件にもよりますが、設置工事自体は通常1日、長くても2日以内に完了するケースがほとんどです。事前の準備や現場調整がしっかりと行われていれば、施工当日にトラブルが発生する心配はありません。
試運転
更新・改修の工事が無事に完了後は、新しく設置されたキュービクルが正常に稼働するかどうかを確認するための試運転と検査が行われます。試運転では、各機器の動作状況や電圧・電流の値をチェックし、異常がないかをその場で確認します。万が一、動作に不具合が見つかっても、即座に調整や再設定が行われるため安心です。検査の結果問題なければ電力会社によって復電処理が行われ、工事に合わせて止められていた電力の供給が再開されます。これにより、設備はこれまで通り使用可能な状態に戻ります。
工事にかかる期間
キュービクルの更新・改修工事にかかる期間は、事前の準備にかかる時間も含めておおよそ2~3ヶ月前後が一般的です。工事の計画や現状の調査、キュービクルの調達などの準備工程に一定の時間を要します。大規模な工事や特殊な設置条件がない限りは、長くても3ヶ月以内に終わることがほとんどです。実際の施工作業にかかる時間は短く、基本的に1日、長くても2日で完了します。より詳細に工事期間を把握したい時は、見積もりを依頼する際に業者に直接確認すると良いでしょう。依頼する業者によっては平均よりも時間がかかる可能性があります。
キュービクル更新・改修にかかる費用相場
キュービクルの更新・改修にかかる費用の相場を紹介します。キュービクル本体の価格は、電気容量や搭載されている機能、耐候性の有無などによって大きく異なります。費用の相場はあくまでも目安の1つとして考えると良いでしょう。費用の相場
キュービクル本体の費用相場は、容量や仕様によって大きく異なります。一般的な相場は、100kwが100万円から200万円、200kwが300万円から400万円、300kwが500万円から600万円、500kwが800万円から1,200万円です。100kwはコンビニなどの小規模な施設で使用されている容量で、200kwは小規模工場や中規模程度の施設、300kwはスーパーマーケットや中規模工場、500kwは大規模施設に適した容量です。本体をまとめて一新する場合は、本体の購入費だけでも数百万円の費用がかかります。
一方で、劣化した一部の機器のみを交換・改修する場合は、必要なパーツ代と施工費のみで済むため、費用を大幅に抑えることが可能です。
なお、更新・改修を実施する場合、先述した本体費用に加えて設置工事費用などの付帯費用が発生します。予算を立てる際は、相場からではなく実際に業者に見積もりを依頼して判断すると良いでしょう。
費用を抑えるコツ
キュービクルの更新・改修にかかる費用を抑える方法としては、中古を選択する方法やレンタル・リースといったアウトソーシングで対応する方法、自社でキュービクルを製造している工事会社に施工を依頼する方法などがあります。最もおすすめの方法は、自社でキュービクルを製造している工事会社に依頼する方法です。更新や改修の工事だけでなくキュービクルの製造も行っている会社であれば、中間マージンがかからないことから費用を安く抑えられる傾向があります。
中古やレンタル、リースなどの方法でも更新・改修費用を抑えられますが、最終的な支払総額は却って高額になることがある点に注意が必要です。
利用できる補助金
キュービクルの更新・改修に活用可能な補助金としては、省エネルギー投資促進支援事業費補助金や民間建築物における省CO2改修支援事業などがあります。キュービクルに対する補助金は存在しませんが、内部の変圧器に関しては、国が定める省エネ基準を満たした機種に更新することで補助金の対象となる可能性があります。更新・改修の費用で困った際は、利用できる補助金がないか確認してみると良いでしょう。
キュービクルの更新・改修で工事会社を選ぶポイント
最後に工事会社を選ぶ際のポイントをまとめて紹介します。工事を依頼する会社を選ぶ時は、対応速度と実績、工事費用に注目すると良いでしょう。相談から実際に工事が実施されるまでにかかる時間や、工事費用は依頼する会社によって大きく差が出る部分のため、依頼後に後悔しないためにはしっかりと比較検討することが大切です。とくにおすすめなのは、自社でキュービクルを製造している工事会社です。工事だけでなく、キュービクルの製造も行っている会社には、中間マージンがかからないため費用を安く抑えられることや、納期が早いことなどのメリットがあります。
更新・改修にかかる費用を抑えたい場合やできる限り早く対応してもらいたい時は、自社でキュービクルの製造も行っている会社を中心に探すと良いでしょう。